──非常に感覚的で、作品の隠された本質を様々な角度から照らし出しているのが
菅野さんの音楽なんだと思います。以前、若林音響監督にお話をうかがった時、
「菅野さんの音楽は、玉手箱の中から何が飛び出てくるか待つしかない」とおっしゃっていました。
菅野 よく理解してくださっていて、嬉しいです(笑)。
──作品の逆を突く一方で、SF作品らしいノイジーでハードな楽曲も何曲か完成していますね。
菅野 神経がささくれるような音も、作っておきたいなと。
もし私が、この作品の登場人物のように感情をどこかに切り離しても、
絶対にそのしっぽは心の中に残っているような気がするんです。
そういう最後に残された感情のしっぽを、これらの曲ではノイジーなギターやシンセのバイブレーションで
表現してみました。
──楽曲はまだまだ制作中ということですが、今回、曲の作り方で何か試していることはありますか?
菅野今回はいつもと違って、3分から5分の長い曲ばかりじゃなく、
数十秒の短い曲をあえていっぱい作ろうと思っています。
──それはなぜですか?
菅野 私が1980年代のTVドラマのサントラから受けるイメージがそれなんです。
昔のドラマは、短いシークエンスの中に登場人物の感情の変化がたくさん入っていて、
その全てに音楽が付いていた気がするんです。 1980年代の雰囲気を求めているということで、
ああいう懐かしい音の付け方を試してみたいなと。
──ボーカル曲は入るのでしょうか?
菅野 今のところ、山根麻衣さんにボーカルをお願いして、2曲レコーディングしました。
でも、それ以上作る気は、今はあまりないですね。
──その理由は?
菅野 ボーカル曲は詞を書きたくて作るんですけど、
「Darker Than BLACK」に関しては、
言葉で言いたいことがあまりないんです。
言葉になる以前のもっとプリミティブな感覚や匂いに対して、音楽で表したいことはたくさんあるんですけど。
──そんな中、山根さんの歌った2曲とは、どんな曲なんですか?
菅野 救いようのない男の気持ちを歌った2曲です(笑)。
山根さんは「カウボーイ・ビバップ」以来、久々にお会いしたんですけど、
以前と変わらず、 女性なのに切ない男心を歌うのにぴったりの声の持ち主で。
諦めきれずにヒリヒリした思いを抱いている男の歌を、かっこよく歌っていただきました。
──「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」で流れる劇伴(BGM)も、
作品の中で大きな注目ポイントですね。ありがとうございました。
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